ジウコ先生、声が枯れてしまって…
おっと、、じゃあ今日はメンテナンスをメインにしよう
熱心な生徒さんが多いので、次回レッスンまでにヒトカラに行ったり、みなさん自主トレをしっかりやってくれます。
が、発声が安定していないと、カラオケで歌い続けると声を枯らしてしまうこともあるかと思います。
今回は実際にレッスンに来られた生徒さんであったケースをご紹介していきます。
ジウコトモニタ(谷本恒治) クリアボイスミュージックスクール代表 数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、 TVなどでも紹介される。 発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、 現在も全国各地から受講生が集まっている。 |
この記事で分かること
・声が枯れた時の対処法
・声が枯れた時にできるボイストレーニング方法
・声が枯れにくくなる日々のトレーニング方法
そもそも声が枯れる原因
声帯の摩擦が強すぎる
簡単に言うと、声帯の摩擦が強すぎることが原因で声が枯れます。
左右の声帯が近づき、「不完全に」閉じることでその間を呼気が流れ、パタパタと風になびくように振動することで音(喉頭原音といいます)が生まれ、その上の空間(声道といいます)で共鳴し、顎、舌、唇などを使って言葉になります。
この際の「パタパタ」が強すぎると、声帯はダメージを受け、声が枯れたり、場合によっては声帯にマメのようなものができる声帯ポリープになったりします。
そんなに大きな声で歌っていないのに声が枯れることがあるんですけど…それは何故?
必ずしも呼気が強いから、とは限らないんだよ。それは次に…
呼気と閉鎖のバランスが上手くいっていない
これは結構見落とされがち、というか、ほとんどここを突っ込むトレーナーさんはいないと思います。僕の見聞きした感じ。
呼気が強すぎると当然それを受け止めようと声帯も頑張る、いわば、呼気と声帯が喧嘩している状態が一番多いケースではありますが、実は声がけっして大きくない方でも声が枯れることがあります。
それが「バランス」の問題。
簡単に言うと、呼気に対して逆に閉鎖の方が強すぎたりするケース。
声帯は「不完全に」閉じることで、ある程度の「ゆとり」「遊び」(車のハンドルのような)ができた状態になります。
だからこそ空気(呼気)が当たるとパタパタと振動することができます。
これがガッチリ閉鎖して固まっていたらどうでしょう。
声帯はうまく振動できず、擦れ合うような状態になります。
女性の方に多い傾向がありますが、カラオケで歌っている時に、若干息っぽい声の人、いません?
これ、声帯が閉じてないのではなく、固くなりすぎている状態の可能性もあります。
(もちろん閉じていない可能性もなくはない)
10年以上も言い続けているんですが、いまだに「息っぽい音だから声帯をしっかり閉じましょう」と教えてしまうトレーナーさんがいまだに減りません。。。めっちゃ危険ですので。
声が枯れたらどうするか
前提は「歌うのをやめる」
これは大前提です。プロのトレーナーでも(さすがに声が枯れることはないですが)、コンディションが悪い時には無理に発声練習したり歌ったりはしません。
「なんか喉が違和感…」と感じたらその日は歌、練習を中止しましょう。
医師に相談する
身も蓋もない話ですが。
例えば声が枯れて数日経っても戻らない、という場合は耳鼻咽喉科、音声外来などを受診することをお勧めします。
自分でできることといえば、市販の漢方などを飲んでみるのもありでしょう。
多くのボイストレーナーさん御用達の漢方「響声破笛丸」をご紹介。
寝る
これに尽きます。
よく「喉によくない飲みもの」なんて言われたりしますが、そもそも飲んだものが通る食道と声が出る声帯(気管)は別です。
逆も然りで、喉にダイレクトに聞く飲み物はありませんが、ビタミンは喉の炎症を抑える効果があるので、果物、野菜などを摂るとよいかと思います。
声が枯れた時にできるボイトレ
ブレストレーニング
声枯れを治すトレーニングというものは存在しませんが、声が枯れた状態でトレーニングをすると、無意識に体はいつもの声を探そうとするので、余計に無理な発声の仕方をしてしまうことがあります。
いつもの鳴り方を探すのではなく、「いつもこうやって出していたはず」という発声のフォームを意識しましょう。
そのために必要なのはなんといっても呼気の安定です。
不用意に息を吐くと、声帯は必ず過度に反応してしまいます。
呼気を安定させ、声帯が適切に振動できるように整えましょう。
実際のレッスンでおこなったエクササイズは、声を出さない方法です。
鼻から「フン!」と息を吐いてみましょう。まさに鼻をかむ時の息です。
これを何度か繰り返しながら、「鼻から息が出ているということは喉で受け止めてないな」と意識しましょう。
喉で受け止めず、通り過ぎているイメージができたら、その「フン!」に音を入れてみましょう。
鼻から息が出た状態で音を乗せれたら成功です。音を入れた瞬間に鼻から息が出てこなくなったら、声を入れた瞬間に喉で受け止めてしまっています。
上手くいくまで何度も繰り返しましょう。
もちろん、歌う時に鼻から息を出すことはありません。喉で受け止めていないか、あくまでも確認作業です。
一瞬エッジボイス
初めにお断りしておくと、エッジボイスはかなりリスクが高いです。僕がいままで見てきた中でも、効果的にエッジボイスのトレーニングができている人はほとんどいません。
なので、一瞬だけにします。
レッスンでおこなったエクササイズをご紹介しましょう。
まず、思いきり喉仏を下げます。(これに関してはベロごと下がってOKです)
その状態で、息を吸っても吐いてもない状態を作ります。(自転車のペダルにもブレーキにも手足をかけていない状態のような)
そのまま声帯「だけ」を動かしてパカパカやってみます。
鏡を見ながら、舌、喉が動いていないか、手で首全体を触ってみて、どこかしらの筋肉が反応していないかをチェックしながら、声帯「だけ」が動いている状態を作ります。
声帯「だけ」を動かせたらそのままピトッとくっつけて(ギュッ!ではないです。あくまでもピトッ)、一瞬だけエッジボイスを鳴らします。
めちゃくちゃ難しいですが、このトレーニングが閉鎖と呼気のバランスを整えるのにめちゃくちゃ効果絶大なので根気よく続けてみてください。
これが上手くできるようになれば、声が枯れることはまずなくなります。
上手くいかなくても、単純に喉頭を下げるだけでもメンテナンスにはなるのでやってみてください。
声が枯れないようにする日頃のメンテナンス
適性キーを見つける
これは歌ではなくて、仕事などで話し続けて声が枯れる、という場合に必要なスキルです。
話し声の適性キーです。
意外と意識していない部分ですが、もしかすると仕事で話していて声がすぐ枯れる、という方は、閉鎖と呼気のバランスもそうですが、そもそも適性キーで話せていない可能性もあります。
適性キーを見つけるのは、シンプルに音域を拡げるトレーニング、それから色んなキーで「おはようございます」と言う練習をすることです。
(別に「おはようございます」でなくてもOKです。僕は「アーノルド・シュワルツェネッガー」で練習しています)
実は少し高めで話す方が楽に話せる、あるいはその逆、あなたが一番安定して出せる音域が必ずあります。
これも日々の積み重ねですが、頑張って見つけてみましょう。
喉頭を下げる
先ほどもチラッと書きましたが、喉頭を下げるトレーニングも効果的です。
毎度言いますが、歌う時に喉頭を下げる必要はありません。むしろ歌いにくいだけなのでやめましょう。
ただ、喉頭が上がると、声帯のすぐ上の喉頭室という部分が狭くなったり、甲状舌骨筋という部分が収縮することで声帯付近にある動脈(上喉頭動脈)の血流が悪くなり、声帯が上手く振動しなくなります。
歌った時に喉頭が上がりすぎないように、日頃から拮抗する筋肉を使っておこう、という認識でOKです。
喉頭のポジションに関する知識はこちら
具体的なエクササイズはこちら
歌う時に喉を下げる必要はないよ、というお話はこちら
声を出さずに声帯トレーニング
“声を出さずに”がポイントです。
声を出すと、閉鎖と呼気のバランスが上手くいってなければ逆効果なので、むしろやめておきましょう。
声を出さずに声帯を鍛えるのは、ただ息を止めるだけです。
特に良いのが「へっ!(無音)」と息を止めるやり方。
エの母音が比較的閉鎖を促しやすいのと、息を止めている時というのは声門が(自然に)完全に閉鎖した状態なので、正しい閉鎖筋の使い方を体が覚えやすい方法です。
シンプルかつどこでもいつでもできるので是非取り入れてみてください。
まとめ
・声が枯れる原因は…
閉鎖と呼気のバランスが上手くいっていない
・声が枯れた時にやるトレーニングは…
鼻からフン!、めっちゃ喉下げて一瞬エッジボイス
・声が枯れなくなる日頃のメンテナンスは…
話し声の適性キーを見つける、喉を下げる、声を出さずに声帯トレーニング
ボイストレーナーは何故声が枯れないのか、それはこれらをやっているからという、いたってシンプルな理由です。
元々喉が強い人もいるかと思いますが、僕はライブで3曲歌ったら声が枯れるガラスの喉の持ち主だったので、そんな僕が勧める方法なんで間違いないです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ジウコトモニタ