僕の声、ミックスボイスですか?
いや、プルチェスト(地声張り上げ)だね
じゃあ、裏声の練習をすればいいですか?
いや、それは全く意味がないよ
実際にジウ研ゼミ会員さまはミックスボイスを理解してくれているので、こういったやり取りはほとんどないですが。
結論:ミックスボイスは地声でも裏声でもありません
つまり、ミックスボイスのトレーニング(ミックスボイスを習得する、ということだけにフォーカスした場合)において、地声の練習も裏声の練習も無意味です。
えーっ!?じゃあ、何を練習すればいいの??
今回はミックスボイス練習の意識の仕方について解説していきます。
ジウコトモニタ(谷本恒治) クリアボイスミュージックスクール代表 数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、 TVなどでも紹介される。 発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、 現在も全国各地から受講生が集まっている。 |
この記事で分かること
・ミックスボイスとはなんぞや?
・ミックスボイスの練習方法
ミックスボイスとはなんぞや?
ミックスボイスは裏声です!
声帯振動の原理という観点でミックスボイスを検証してみましょう。
そのためにはまず地声(≠チェストボイス)と裏声(≠ヘッドボイス)を理解しておく必要があります。
ここでいう地声、裏声はこんな感じ。
・地声…声門下圧が強い(呼気が強く、それを声帯が頑張って受け止めている)状態
・裏声…声門閉鎖が不十分で息が流れている(声門下圧がほぼない)状態
では、ミックスボイス発声時にはどうなっているのか。
ミックスボイス発声時には、声門下圧よりも声門上圧の方が強くなっていると言われています。
つまり、ミックスボイス発声時には実は息はそれほど吐いていません。
息が流れているかどうかはさておき、声門下圧が少ない、という観点からは、体感としても声帯での空気抵抗を感じることは少なく、声帯の摩擦も軽減されているので、ストレスのなさは地声からはほど遠い、極端に言えば裏声に近い状態、と言えるでしょう(まあまあ雑に分類しています)
ミックスボイスは地声です!
次に、声帯の“状態”という観点でミックスボイスを検証してみましょう。
声帯は輪状甲状筋(Cricothyroid Muscle=CT)という筋肉により間接的に引っ張られ、伸展することで音程を上げます。
一方、甲状披裂筋(Thyroarytenoid Muscle=TA)という筋肉が収縮することで声帯に厚みを作り(細かい話は割愛…)、厚みのある声を作ります。
伸展させる力が優位=ヘッドボイス“寄り”
収縮させる力が優位=チェストボイス“寄り”
この二つのバランスを維持した“状態”がミックスボイスです。
ここで綱引きを連想してみてください。
A組とB組の対決で、A組が圧倒的優位な状態です。
でも実は、A組の人たちは、B組の人たちが少なからず逆方向に引っ張る力を加えているからこそ、綱引きが成立します。
B組の人たち全員が手を離したら、A組の人たちは「スカッ」と力が抜けます。
つまり、綱引きの状態は、互いに協力する力、とも、互いに反発しあう力、とも言えます。
これを拮抗筋といって、TAとCTはまさに拮抗筋なのです。
いくらヘッドボイス“寄り”でも、多少なりともチェストボイスの要素は含まれています。
これが裏声(息が流れたファルセット)とヘッドボイスが別物である理由です。
ややこしくなりますが、あえてここでチェストボイス的要素を「地声っぽいニュアンス」と表現するなら、ヘッドボイスもミドルボイスも、ミックスボイス全体の状態は「地声」と言うことができます。(少なくとも裏声ではないと言えます)
なんだか入り組んできたわね…
結局ミックスボイスは地声?裏声?
結論:何声とかどうでもよくね?
実は地声、裏声の方が難しい
他の記事でも動画でもよく、ミックスボイスは「本来の声帯(と他の筋肉)を適切に使えた“自然な”状態」と解説しています。
詳しくはこれらの記事にお任せするとして…
声帯を引っ張る=ヘッドボイスに寄っていく
声帯を縮める=チェストボイスに寄っていく
(まんなからへんにどちらとも言えない範囲がある)
というだけなので、本来そうなっているはずだよね、という状態がミックスボイスです。
つまり、私たちは、わざわざそれ以上に声門下圧をかけたり(地声)、わざわざ閉鎖を不十分にして息を流したり(裏声)している、とも言えます。
そうなんです、わざわざミックスボイスよりも難しい発声をしているんです。
なので何声とかじゃない
つまり、地「声」も裏「声」も、わざわざ「声」を作らなければミックスボイスになるんです。
これを僕はレッスンなどで「何声とかじゃなく、ただの“音”」と表現したりします。
どうでしょう?ここにきて「ミックス(混ざった)ボイス(声)」という名称。
なんか、「ミックスボイス」という言葉そのものが発声の仕方を惑わせてね?
その通り。
「声」と聞くと(一般的には)「地声」か「裏声」しかありません。
そこに「〇〇ボイス(声」と言われると、どうしても無意識的に、どちらかの「声」に当てはめてしまいます。
何声とか意識せず、各エクササイズの目的を意識して、「あ、なんか思いの外歌に使えそうだな」って声(音)が出たら、それでよくね?
「へ~、コレ、ミックスボイスって言うんだ、まあ、何でもいいけど」
くらいでいいと思います。
という解説ですら、定義や内容によって言うこと変わりますから(笑)
まとめ
結論:何ボイスとか、マジどーでもよくね?
レッスンでも説明の便宜上、「ミックス」という言葉も使うし、誤解していてガッツリ裏声がミックスだと信じてやまない子に対しては「地声張り上げてみ?」ということもあるし、まあ、マジでどーでもいいかな、と。
ただ、独学でミックスボイスを習得しようとしている人は100%上手くいかない、とだけは言っておきます。残念ですが。
というのも、現状どんな発声をしているかによって地声を意識するのか、裏声を意識するのか、はたまた「何声とかどーでもよくね?」を意識するのか、異なってくるからです。
そして自分で「現状どうか」「ここからどう持っていくべきか」が判断できれば、もうアナタはボイストレーナーになりなさい。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ジウコトモニタ