僕のところに体験レッスンに来られる方の多くが、「ミックスボイスをネットで調べて練習してるんですけど上手く行かなくて…」というお悩みを持ってらっしゃいます。
そして残念ながら、ほとんどの人がミックスボイスを誤解したまま練習を続けて危険な発声になってしまっています。
そっちに行ってしまったら、正しい方向に修正するの、めっちゃ大変だよ
僕がよく体験レッスンに来られた方に言うフレーズです。
マジ卍危険です。
基本的にミックスボイス練習を独学でやるな!
が前提です。
が、できれば金かけずに習得したいという気持ちも分かる。
なのでまずはしっかりとミックスボイスとは何かという知識を頭に入れておきましょう。
ジウコトモニタ(谷本恒治) クリアボイスミュージックスクール代表 数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、 TVなどでも紹介される。 発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、 現在も全国各地から受講生が集まっている。 |
今回はまず大前提のミックスボイスとはというお話を書いていきます。
この記事で分かること ・ミックスボイスの全て ・ミックスボイスを練習する時の注意点 |
結論
ミックスボイスとは「声帯を適切に(本来の機能をフルに)使えた“状態”」のことをいう
「この声がミックスボイスです」は存在しない(人によって持っている“楽器”が違うんだから当たり前だよね)
特に多いのが、裏声の締めた版をミックスと勘違いして“バカ殿ボイス”で歌っている人。
まあ、本人がそれが好きなら全然おk。「あ、間違えてたかも…」という方は是非続きをお読みください。
ミックスボイスを定義しよう
声帯の“状態”から定義するミックスボイス
まず、声帯の“状態”という観点から定義します。
声帯は外側から、粘膜、靭帯、筋肉、という三層で成り立っています。
そして、この粘膜、靭帯、筋肉が振動した状態を「地声」、粘膜と靭帯の部分だけが振動した状態を「裏声」と言います。
よく「地声は声帯が完全に閉じた状態、裏声は声帯に隙間が開いた状態」ってネットで見るけど、違うの?
声帯が完全に閉じた状態=息を止めた状態です。
その辺はまた別の機会に詳しく…
なにせ、粘膜靭帯筋肉=地声、粘膜靭帯=裏声、とするなら、「ちょっと筋肉感も残っている」状態を「ミドルボイス」と言えます。(チェストボイス、ミドルボイス、ヘッドボイスとそれぞれ)
声帯は音程を上げる際に間接的に引き延ばされます(これまた別で詳しく…)。
引き伸ばされることで徐々に筋肉は薄く伸ばされ、靭帯にテンションがかかっていく。
なので、チェストボイス→(声帯を引っ張って徐々に)ミドルボイス→(声帯を引っ張って徐々に)ヘッドボイス、となっていきます。
徐々に引っ張っていくので、徐々に声が変化していく。はず。
つまり、地声と裏声が明確に分かれることはない。はず。本来。
なので、「本来低音~高音まで切り替わらず繋がっているよね」という“全体の状態”をミックスと言います。
(これが「ミドルボイス」と「ミックスボイス」という言葉の使い分け)
声帯を引っ張る筋肉に関してはこちらにもう少しだけ掘り下げて書いています。
声帯振動の観点から定義するミックスボイス
お医者さんは割とこの定義が多いです。
逆にボイストレーナーは、やはり筋肉のトレーニングという観点から、上記の定義の方が多いですが、実はこの部分も見落としてはいけない重要な部分です。
声帯の振動の仕方は大きく分けて4種類あります。
声帯振動の種類 ・モーダルレジスタ ・ファルセットレジスタ ・ボーカルフライ(エッジボイス) ・ホイッスルボイス |
このモーダルレジスタを、お医者さんは「実声」と呼んだりします。(お医者さんによっても定義は様々)
この実声の中に、さらに、声門下圧発声と声門上圧発声があります。
なんか難しい言葉が出てきたぞ…?
もう少し進めてみましょう。
ミックスボイス発声時は、声門上圧の状態にあると言われています。
細かく説明するととても複雑になるのでざっくりと…
下から空気を押し出して声帯の力で受け止める=声門下圧
声帯の上からも圧がかかって閉鎖の状態をキープ=声門上圧
下の練習方法でもう少し理解していただけると思うのでここではこの辺にして…
地声=下からの呼気を声帯の筋肉で受け止める=つまりミックスではない
裏声に締めた版=裏声の状態で声門をきつく閉じることで呼気を受け止める=つまりミックスではない
ということになります。
ミックスボイスの超初歩的練習
とりま、リップロールやっときゃおk
プルルルル…と唇をふるわせるヤツです。
これがまさに声門上圧。
当然、息を吐く(肺から息を送り出す)から声は出るわけですが、プルルルル…と唇で「ある程度」息の流れを制限する(全部は出て行かず口の中で留まる)ことで声帯の上に空気が乗っかっている状態。
正直、これさえやっときゃおk、という万能なエクササイズです。
それでいて幅広いスケールで
とはいえ、低音域だけだと声門下圧を使ってリップロールをやることは実は可能。
失敗している、上手くいっていないことに気付きにくいエクササイズでもあります。
こんな風になっていたり。
リップロールちゃんとできている人いない説。 pic.twitter.com/2ipKxx72Rm
— 大阪ボイトレ クリアボイス (@clearvoicemusic) July 23, 2022
こうなってたかも…
なのでひとまずスケールは1.5オクターブスケールという、最もポピュラーなスケールで。
上手くいかない人は、まずは高音域の裏声の状態のまま下降する練習をしてみましょう。
高音域の裏声(声帯で域を受け止めていない声)のまま下がることで、声門上圧発声を身につける狙いです。ざっくり言うと、全部裏声のつもりで。(あくまでも最初の段階では)
実はこれでほぼミックスボイスの入り口には入った状態です。
ミックスボイス=高音を強く、ミックスボイス=裏声+声門閉鎖(これが一番危険)という間違った情報に惑わされず、一歩ずつ確実にステップを踏んでいきましょう。
まとめ
・ミックスボイスは『音色』ではなく『状態』を指す ・ミックスボイスは『声門上圧』発声 ・まずはリップロール&1.5オクターブスケールで声門上圧発声に慣れ、低音~高音を繋げる |
ボイトレ通信講座「ジウ研ゼミ」で発声の個別相談やってます。
「私の発声、ミックスになっていますか?」とか、ざっくりした質問でもいいの?
もちろん全然おk。他にも「ここが苦手なんすけど、どんな練習すればいいですか?」的な相談も回数無制限で受け付けてます!
最後までお読みいただきありがとうございました。
ジウコ
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