発声のフォーム

喉を下げるボイトレで気を付けるべき点

「喉を下げる」…かれこれ長い年月、このフレーズが使われてきました。
「喉を下げましょう」「喉を下げるトレーニングをしましょう」、トレーニーの方々も「喉が上がるのが悩みです…」「喉を下げたいです…」

その結果、どうでしょう?ボイトレ難民が山ほど溢れかえってしまいました。

では、なぜ「喉を下げる」のまやかしが蔓延したのか、なぜそれがボイトレ難民を生み出したのか。

その根拠と喉を下げるトレーニングでの気を付けるべき点を解説していきます。

ジウコトモニタ(谷本恒治)
クリアボイスミュージックスクール代表
数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、
TVなどでも紹介される。
発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、
現在も全国各地から受講生が集まっている。

この記事で分かること
喉を下げる無意味さ

喉を下げるトレーニングの目的

喉を下げる練習の無意味さ

豚に真珠のイラスト

「喉を下げる」で漏れなく失敗していると思います

ボイトレ難民

喉を下げる練習をしているけど、一向に上手くいかないっす…

ジウコ

答えは簡単、それは「力」に「力」で対抗しているだけだからだよ

それでは詳しく解説していきましょう。

例えば雨の日、あなたは傘を差しています。当然、少なからず腕の力を使っていますよね?
そこにとても強い風が吹きます。あなたは傘が風に飛ばされないように、一層腕の力を使います。

これを「喉を下げるトレーニング」に置き換えてみましょう。

あなたは喉が上がります。それは体が反射的に「そうしたほうが声が出しやすい」と感じているからです。
そこをすっ飛ばして「喉は下げるべきだ」と力を入れます。

喉は「下げられまい!」とより一層力が入ります。

これはまさに昨今の「科学的根拠に基づいた…」とかいうナゾのフレコミの典型です。

科学的根拠とやらに基づくと喉は下がっている方がいいのかも分かりませんが、そこには「脊髄反射」というものは完全に無視された理論です。体は科学的根拠通りに動いてはくれません。

目的を見失いがちな昨今のボイトレ理論

そもそも、あなたがボイトレをする理由はなんでしょう?

喉を下げることですか?

あなたの目的は「いい声で歌う」ことです。

そのための手段として、喉を下げるというトレーニングが必要になる可能性は十分にあります。

実際に僕もレッスンで頻繁に喉を下げるトレーニングを行います。
それに関する記事もいつくか書いています。

ですが、「喉を下げる」という“行為そのもの”が目的になってしまっている人も非常に多いです。

実際に体験レッスンに来られて「喉が上がるんで改善したいです」と仰られて、実際に声を出してもらうと「いや、そんなに気にならないよ」というケースもよくあります。

今一度、「ボイトレをする目的は何か」を考えてみましょう。

喉を下げるトレーニングの目的と注意点

CAUTIONのイラスト

歌には使いません!

ここも案外勘違いしている人がいますが、歌う時に喉を下げる必要はありません
(POPS、ROCKで喉を「わざわざ」下げて歌っている人は皆無です)

では何故喉を下げるトレーニングをするのか?

それは単純に「引き下げ筋を鍛えておく」ということ“だけ”です。

引き下げ筋というのは、胸骨甲状筋、胸骨舌骨筋という、喉頭を下から引っ張る筋肉です。

喉頭(喉の軟骨)は首の中で宙づりになっています。そして日頃どちらかというと引き上げ筋の方が活躍しています(ご飯を食べて飲み込む時など)。

なので発声時にも、どうしても引き下げ筋よりも反応が早くなってしまいます(筋肉は使い慣れている部分ほど反応速度も速くなります)。

そこで、それに拮抗する筋肉を日頃トレーニングしておこう、という程度の意識でOKです。

※もちろん発声の状態によります。詳しくはレッスンなどでお尋ねください

無理に力を入れて下げません!

これも非常に多いです。
正直言うと、YouTubeなどで動画をUPされているボイストレーナーの方でも「いや、その下げ方良くないよ」と思うものもあります。

何かというと、舌根の力で喉頭を上から圧迫した下げ方です。
これは非常によくありません。これならまだ喉が上がっている方が全然マシです。

舌根で喉頭を押し下げることで、結局その舌根が咽頭を圧迫して狭くなっています。
もちろんいい声は出ません。

そうではなくて、口の奥を広げるという意識にすると、自然と咽頭部分にスペースができ、引き下げ筋に働きかけやすくなります。

その状態で「グッ」「ゴウ」などのエクササイズを取り入れます。
ここでも「G」の発音の瞬間に引き下げ筋の力が抜け、自然に喉頭が下がる(落ちる)、という動きを作ります。引っ張る、押し込むという動きは一切無意味です。

感覚的には「力を入れて引き下げる」のではなく「力を抜いて喉を無効にする」という感じです。

力に力で対抗しようとすると必ずそれにまた反発する力が生まれます。
喉を下げるトレーニングに限らず、「力を使いにくい状況に持って行く」というのが自然なトレーニング方法といえるでしょう。

まとめ

まとめのイラスト

喉を下げるのに力を入れない
歌う時に喉を下げる必要はない
あくまでも「拮抗筋を使い慣れておこう」というだけのもの

最後までお読みいただきありがとうございました。
ジウコトモニタ

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