喉のコンディショニング

ボイトレ民に筋トレは必要?

ジウ研ゼミ会員

ジウコ先生、筋トレってした方がいいっすか?

ジウコ

めっちゃよく聞かれる質問。答えはイエスともノーとも言える

と、曖昧な答えな導入ですが、個人的には率先してやった方がいい派。

ただ経験上、格闘技をやっている人なんかは、プルチェスト(地声張り上げ)タイプが多いように感じます。

そこで今回は、ボイストレーニングの効率アップに直結する筋トレをご紹介します。

ジウコトモニタ(谷本恒治)
クリアボイスミュージックスクール代表
数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、
TVなどでも紹介される。
発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、
現在も全国各地から受講生が集まっている。

この記事で分かること
筋トレの必要性
オススメの筋トレとNG筋トレ

ボイトレと筋トレの関係性

握手する二人

ボイトレに必要なのは可動域と反応速度

ジウ研ゼミ会員

可動域??反応速度??

ジウコ

簡単に言うと、筋力ではなく、動かし慣れているかどうか

格闘技をやっている人にプルチェストタイプが多いのは、筋肉の反応速度が速いがゆえ、適切な声帯振動を作る前に下から圧をかける反応の方が勝ってしまうことが原因ではないかと考えられます(個人的観測)。

誰しも一度は、ボクサーが寝そべって、上からトレーナーがボールをお腹に叩きつけるシーンを見たことがあると思います。

つまり、腹筋が強すぎるために、過剰に反応し、過剰に息を押し出してしまうんです。

ちなみによく言いますが、発声に腹筋の力はさほど影響しません。

歩くのに足の筋力は使っているけど、歩くために足を鍛える必要がないのと同じです。

鍛える必要はなく、使い慣れる、これだけで十分です。

では、歩くために必要な脚力を使い慣れるには、何をするのが一番効率いいでしょう?

そうです。

歩くことです。

同じように、歌に必要な筋力を使い慣れるには、歌うことが一番です。

腹筋トレーニングをすれば、体を起こす力が強くなるだけで歌には関係ありません。

さらに大事なのはしなやかさ

これまたコ難しい表現ですが、スポーツをされていた方はしっくりくるのではないでしょうか?

佐々木朗希投手が速い球を投げられるのは腕力ではなく、腕がムチのようにしなやかに振れるためです。

声帯の筋肉にフォーカスしても同じことが言えます。

甲状披裂筋(thyroarytenoid muscle)という筋肉が張りとゆとりを作ることで声帯が分厚く大きく振動し張りのある声を出すことができます。

筋肉は固まるとしなやかさを作ることができません。

なので鍛えることもさることながら、柔らかくしておくことも重要なのです。先述の可動域にも繋がる部分でとても重要です。

オススメ筋トレ

腹筋する男性

腕立て伏せ、懸垂、スクワット

なかなかジムにでも行かない限り、懸垂は難しいですが…

代わりにオススメなのがベントローというトレーニング方法。

ダンベル(なければ2㍑のペットボトルなど)を両手に持ち、膝を軽く曲げて腰を45°ほど屈めます。この時背筋はまっすぐに。

その状態で肘を後方に引くようにしてダンベルを引き上げます。

背中(広背筋)に負荷がかかるのが分かるかと思います。腕の力で持ち上げるのではなく、肘と背中を近づけるというイメージです。

ジウ研ゼミ会員

やり方はわかったけど、何故背中を鍛えるの?

ジウコ

ナイスな質問。次で解説していくね

筋肉のしなやかさは血流の良さから

筋肉には張りとしなやかさが重要とお話しました。

ではそのしなやかさを作るためには何が不可欠でしょう?

それが血流です。

肩こりなどの筋肉の固さは、血流の悪さが原因です。

長時間同じ姿勢でいる、同じ方向にばかり動く、などによって血流が悪くなり、コリや痛みを生じます。

血流が悪くなることで筋肉パフォーマンスが低下する、すなわち発声にもあまりよろしくない影響を与えてしまいます。

そこで前述の筋トレが効果を発揮します。

何故腕立て伏せ、ベントロー(懸垂)、スクワットなのか。

それぞれのトレーニングする部位を想像してみてください。

ジウ研ゼミ会員

全て大きな筋肉ね!

ジウコ

ご名答。大きな筋肉を動かすことで血流を良くする効果が期待できるのだ

特に背中の筋肉(広背筋)は、呼吸を深くするのにも重要な役割を担います。

胸郭がしっかり広がることでより深い呼吸をすることができるんですが、広背筋が固くなっているとその動きを制限してしまいます。

実際レッスンをしていても、比較的女性の方が呼吸が浅い傾向にあります。(男性は普段から重いものを持ったり、多少広背筋が活躍している)

時々、女性で「呼吸が上手だな…」と思って聞いてみると、案の定、水泳をやっていた、などの答えが多いです。

背中は特に積極的に動かしましょう。

NGな筋トレ(多少個人的な体感)

TABOO

首の筋肉のトレーニングは慎重に

僕は個人的には首の筋肉はほどほどにしています。

“首の筋肉”というのは、いわゆる内喉頭筋、外喉頭筋ではなく、まんま首の筋肉(僧帽筋、板状筋、胸鎖乳突筋)です。

特に胸鎖乳突筋は呼吸に大きな影響を及ぼすので、ここが固くなっていると呼吸が浅くなり、安定した発声をすることができません。

胸鎖乳突筋は主にストレッチ、鍛えるといっても、発声のエクササイズの中に胸鎖乳突筋を動かすメニューを取り入れる程度にしています。
※これに関してはまたいずれ…

内喉頭筋に関してはこちらも併せてお読みください。

ストレートネックも発声には不利

とはいえ、脊髄を支えるのに首の筋肉は不可欠です。

前述の板状筋、僧帽筋は積極的に、かつ、ほどほどにトレーニングしましょう。

板状筋(ばんじょうきん)とは首の真後ろの筋肉で、頭板状筋・頸板状筋に分かれています。

街を歩けばスマホ見ながら、電車に乗ればスマホ見ながら、「そんなに四六時中スマホ見ないとアカンほど時間の使い方下手なん?」といつも思います。

当然下を向いて画面とにらめっこしっぱなしなので首の筋肉はカチカチです。

筋肉や骨は良くも悪くも形状記憶機能が備わっています。

ずっと下を向いていると筋肉はその形を覚え、真っすぐにしようとしても「いや、そうじゃない!」と元に戻ろうとします。

ホースをぐるぐる巻きの状態のまま水道に繋いで蛇口をひねる人はいるでしょうか?

同じように姿勢が悪いと息の流れは必ず悪くなります。

NG行為

そこで日頃の筋トレ、ストレッチが重要になるのですが、肝心なのは、板状筋、僧帽筋は縮める動きを取り入れること。

下を向いてスマホを見ている状態、すなわち、首の後ろが伸びている状態です。そこにさらに伸ばす動き「のみ」を取り入れるのは全く無意味です。(筋肉の緊張をほぐす意味で伸ばす動きは効果的ではありますが、「のみ」ではいけない、という意味です)

板状筋が伸びた状態で固まっているのですから、縮める「逆ストレッチ」を取り入れましょう。

もう一つ、再三「ほどほどに」と書いていますが、やりすぎると固くなる、反応が早くなる、ということがあります。

これは個人差はあると思います。プロのシンガーの中でも「筋トレをやめてから声が出しやすくなった」という人もいます。

日々のコンディションを見ながら、ベストな方法を見つけましょう。

まとめ

まとめ

ボイトレに適した筋トレは…
大きな筋肉(胸、背中、太腿)を動かして血流をよく
ボイトレに不向きな筋トレは…
首の筋トレはほどほどに(個人差あり)
首の後ろは縮める動きを

筋トレに限らず、自分のベストな体(体重、体脂肪率、筋肉量など)があるはず。筋トレすればするほどいい、ということはありません。

色々試しながら自分のベストな体を見つけましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ジウコトモニタ

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