喉の力を抜くのがなかなか難しくて…
喉の力を抜くのはほぼ不可能だよ
ななな、なんだって!?
あなたは腕立て伏せをしながら腕の力を抜くことができるでしょうか?
力が入っている筋肉を弛緩させることはできます。
が、力を入れざるを得なくなっている状態で力を抜くことはほぼ不可能です。
現在ボイトレに通っている方で、トレーナーから「喉の力を抜いて!」なんて言われたことがある方もいらっしゃるんじゃあないでしょうか?
そんな時はこう返しましょう!
「いや、抜けないから困ってんすよ!」
ジウコトモニタ(谷本恒治) クリアボイスミュージックスクール代表 数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、 TVなどでも紹介される。 発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、 現在も全国各地から受講生が集まっている。 |
この記事で分かること
喉に力が入る原因
喉の力みを取るためのエクササイズ
喉に力が入る原因は何ですか?
筋肉はあなたにとって悪いことはしない!
今、あなたはおそらくこの記事を無言で読んでいると思います。
今、あなたの喉は上がったり奥まったり、力が入っていますか?
おそらくほとんどの方が喉に力が入っていない状態でこの記事を読んでいるはずです。
(無言で読みながらも喉に極度の力みを感じる方は何らかの病気である可能性があるので、言語聴覚士などに相談してみてください)
そう、あなたはおそらく発声時に喉に力が入るはずです。
では、何故力が入るのでしょう?
実はそれは「あなたのため」を思って筋肉が動いているからです。
つまり、筋肉は「よかれ」と思って力が入るのです。
「よかれ」と思って??
そもそも、体の中に必要のない筋肉は存在しません。
必要がなければ進化の中で無くなっていっているはずです。人であれば体毛や尻尾、ウミウシであれば貝殻(ウミウシは貝の仲間です)、といった具合に。
つまり、必要だから筋肉は存在し、力が入るのです。
でも、喉に力が入ると歌いにくいと思うんだけど…
それではもう少し詳しく解説していきましょう。
喉の力は単独では働いていない
喉(喉頭)の周りには外喉頭筋という種類の筋肉がたくさんあります。
喉頭及び舌骨は首の中で宙ぶらりんになっています。それらを支えたり動かしたりするのが外喉頭筋です。
これらは私たち人間が生命を維持するためにとても重要な筋肉です。
嚥下、咳、それからもちろん発声にも、常に使っています。
使い慣れている分、反応も早い筋肉でもあります。
なので発声時には何かと反応してしまいます。
では、何に反応するのでしょうか?
これは僕の持論ですが、ほぼ、息の支え、軟口蓋、だと考えています。
息の支え??軟口蓋??
さらに詳しく解説していきましょう。
肝は閉鎖と呼気圧(気流)のバランス
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、声は「ある程度」閉鎖した声帯の隙間(声門)の間を空気が通ることでバタバタと旗がなびくように振動し、音(喉頭原音)が発生します。
「地声は声帯が完全に閉じた状態です」
なんてトンチンカンな説明をしてしまう人もいますが、声帯が完全に閉じたた息が止まります。
良い意味、不完全に閉じることで空気が通り、バタバタとなるのですが、当然、空気が通りすぎると声門が開いている時間の方が長くなり、閉じる力が強すぎるとバタバタとなびいてくれません。
この二つのパワーバランスで良い声が作られるのです。
が。
このバランスが崩れると、「他の何か」でバランスを補わないといけなくなるのです。
栄養が不足するとサプリメントを飲む、コケると手をつく、というようなものです。
ただ、これらの例は体にとって良いことですが、発声にとっては必ずしも良いことが起きるとも限らない。
それが「喉の力み」です。
つまり、栄養が不足して肌が荒れてくる、胃腸が弱ってくるように、閉鎖と気流のバランスが取れなくなると声帯は振動しにくくなってきます。
そこで喉を締めたりすることで「足りない力」を補おうとするのです。
これが「よかれ」と思って働く力です。
喉を締める力などは当然「よかれ」と思って入るのですが、実は喉が締まることでかえって声は出しにくくなる。
「じゃあ緩めればいいじゃん」と思っても、「よかれ」と思って入っている力なので緩めることができない。
つまり、「喉の力を抜きましょう」は、「栄養が足りなくても肌を荒らさないでおきましょう」というのと同じなのです。
そもそも言っていることがむちゃくちゃなんです。
根本的な原因の改善を
何故喉を締めざるを得なくなっているのか
コ難しい言い方ですが、喉に力を「入れざるを得ない」状態になっています。
これを抜こうと思ってもほぼ不可能です。
前述の通り、栄養が足りなくても肌を荒らすな、コケても手を付くな、梅干しを見ても唾液を出すな、と言っているのと同じです。
専門的には「反射(脊髄反射)」と言います。この言葉自体は全然専門的ではありませんが…
筋肉が自分の意思とは無関係に、「何か」に反応して動いてしまう現象です。
当然、喉に力が入るのも「反射」です。
じゃあ、何に反射しているの?
それが「体の支え」「軟口蓋」です。
この二つがほぼほぼ反射の原因です。
気流を乱す体の支えと軟口蓋
先ほど、声帯の閉鎖と呼気圧(気流)のバランスで音が出る、と解説しました。
この気流を上手くコントロールできなくなった時、バランスは崩れます。
つまり、息が流れ過ぎる状態です。
息が流れ過ぎる原因としては、①体が萎んでしまう、②鼻腔から息が漏れてしまう、このどちらかしかありません。
息が流れ過ぎると閉鎖筋群の力だけでは気流を止められなくなるので、反射的に喉を締めたりする筋肉が働くのです。
この二つを解決しないことには、喉の力を抜こうにも抜けません。
それでもあなたは「コケても手をつかないように頑張るぞ!」と、顔面血だらけになりますか?
体の支えのトレーニング
体の支え、というと馴染みのない言葉かも分かりません。
でも、腹式呼吸、胸式呼吸と聞くと、一度は耳にしたことがあるでしょう。
熱心な読者であれば、「歌う時は腹式呼吸で!」なんて小学生レベルのことは言わないと思いますが、まだ腹式呼吸信者がいればまずはこちらをお読みください。
“不用意”な息は、コントロールできるところはあとは「喉」しか残されていません。
不用意に息が出て行かないように、しっかりと肋骨、背中をキープした状態で発声する癖をつけましょう。
厄介な軟口蓋のトレーニング
ボイトレ経験者であれば、軟口蓋を上げるトレーニングに苦戦した方も多いのではないでしょうか?
ボイトレを受けている方で「はて?軟口蓋」となった方は、ボイトレスクールを変えることを検討してみてください。(というくらい重要なトレーニングです)
軟口蓋に関しては、それだけで一つ、いや、三つは記事が書けるのでここでは割愛させていただきまして…
簡単に言うと、①しっかり口に息を持ってくる、②子音の発音(特に破裂音)をしっかり作る、という意識でおkです。
軟口蓋を上げようとする意識よりもこっちの方が効率は良いかもです。
こちらの動画を参考にトレーニングしてみてください。
まとめ
喉の力みを取る方法
「良かれ」と思って入っている力を抜くのは無理ゲー
喉に力が入る原因を見つけることが先決
それはほぼ体の支えか軟口蓋
コケても手をつかないようにする前に、コケる原因(靴がガバガバだった、段差があった、など)を見つけて改善する、梅干しを見てヨダレが出るなら梅干しを見ないようにする。
「喉の力を抜きましょう」は、そもそもピントがズレた考え方です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ジウコトモニタ