息のスピードを意識して歌ってみました。
しかし、高音で地声感強めになり、しんどくなってしまいました。
これって何が原因なんでしょう?
ジウ研ゼミ会員さまからご相談いただきました。
※実際には曲を歌った動画を添えていただいており、ジウコによるエクササイズのデモの動画を返信、他の会員さまにも共有しております
確かに、以前に聞いた時よりも息のスピードを意識できているね。
めちゃくちゃ良くなってるよ!
ただ、その分コントロールが効かなくなっている部分もあるかな…
というジウコの回答。
コントロール??
声門閉鎖の力や、音の高さ、発音、フレーズに見合った息を使えているか、ということです
という感じで、この会員さまの今回の課題は「ブレスコントロール」。
文字通り、息を自在に操れるか、というもの。
声帯を“適切に”振動させるには、当然息も“適切に”吐いてあげないといけません。
詳しい解説と具体的名なエクササイズをご紹介していきましょう。
ジウコトモニタ(谷本恒治) クリアボイスミュージックスクール代表 数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、 TVなどでも紹介される。 発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、 現在も全国各地から受講生が集まっている。 |
この記事で分かること
声門閉鎖と呼気圧のバランスの重要性
具体的なバランスを取るためのトレーニング方法
そもそもブレスコントロールって何?
吐けばいいってもんじゃない!
中には「歌う時にはたくさん息を使わないといけない」と思っている人も多いのでは?
もちろん、ジャンルや曲が求めるニュアンスによっては、息の量を必要とする場面もなくはないです。
が、基本的には吐く息の量は実はそんなに必要ありません。
えっ!?そうなのっ!?
よく誤解されがちなんですが、今回ご相談いただいた会員さまが言うように、大事なのは息の「量」ではなく「スピード(圧力)」です。
適切な量とスピードが必要
息を吐けば吐くほど、下から息が出ていく力に声帯は対抗しないといけません。
そして無理して吐く→閉鎖も強める(プルチェスト)か、限界がきてひっくり返ってしまう(フリップ)かのどちらかになります。
だから高音が上手く歌えなかったんだね
その通り!
今回の会員さまの状態
で、今回の会員さまの例。
以前は息がふわ~っとしてて、中高音で少し芯のない声になってたんですが、それが随分改善されてて驚き!
ただ、ご本人が仰られるように、高音で少し張り上げ発声になってしまっている印象。
この原因が、息の「量」。
息のスピードを意識した分、量も増えてしまった感じ。
ボールを勢いよく投げるのに最初にステップ踏むような感じかな。
なので弾みをつけない練習を
前述の「最初のステップ」の例で言うと、ノーステップで弾みをつけずに声を出す、という癖をつける練習が必要です。
それが今回のタイトル、「スタッカート」の練習。
スタッカート(伊:staccato、「切り離された」の意)は、音楽におけるアーティキュレーションの一つ。 現代の記譜法においては、スタッカートは本来の音価よりも短く演奏することを指し、本来の音価分に不足する残りの時間を無音にすることで音符同士を分離する。 遅くとも1676年には楽曲の中に現れている。
Wikipediaより
短く切ることで助走をつけない、発音の後から押し込まない(息を吐き出さない)癖をつけます。
具体的なスタッカートのエクササイズ
スタッカートの練習って、どんなことをすればいいんでしょう…?
大きく分けて、
1体の支え
2.息の出し所
3.声門上圧
という観点からスタッカートの練習をおこなう必要があるっす
バッ
まずは「バッ」という破裂音。
このエクササイズで声門より上(特に口の中)の空気を強く使う感覚を身に付けます。
ついでに軟口蓋を上げる、喉頭の安定、TA強化などなど、万能なエクササイズです。上手く行かなくてもリスクが少ないエクササイズなので、しこたま練習しましょう。
バハハハハ
これは最近の僕のお気に入り。
バッという発音は当然、口の中の空気を破裂させる音。
そこから間髪入れずに素早く「バハハハハ」ということで、「口の中の空気(バッの続きの空気)を使うんだよ」と体に覚えさせる目的です。
もう一つは、バッと違ってハッという発音はどこでも止まらない(バッは唇で止まる)ので、体の支えがないとただただ息がダダ漏れになります。
なのでこの「バハハハハ」で息の出し所、体の支えを作ります。
顎の下触ってン
これは少々種類の違うエクササイズ。
グロータルオンセット(Glottal Onset/Glottal=声門、Onset=音の始まり)と言って、声門を閉じた状態から発声するエクササイズです。
声帯は使うんですが、なるべく声帯の力に頼らず、上記の二つの練習で体の支えを意識し、“ピトッと触れ合っているだけ”という状態を作ります。
この状態で小刻みに「ン、ン、ン、ン、」と発声するんですが、この時に気を付けるポイント。
顎の下のプニプニした所に指を当てて、力みが生じないかを気を付けながらおこないます。
これにはどういった意味があるの?
顎舌骨筋という筋肉が過剰に反応していないかチェックするっす
実はほとんどの人が、声門閉鎖をおこなう時に声帯の筋肉だけではなく、他の(余計な)筋肉が手伝ってしまっています。
それが主に舌骨上筋群と呼ばれる筋肉群、特に顎舌骨筋です。(他にもあるけど)
実際に、プルチェスト(地声張り上げ)タイプの生徒さんに、声帯“だけ”を使う閉鎖エクササイズをやると、大抵の人は声帯を上手く閉じることができません。
地声が強いから声門閉鎖の力も強いんじゃないの?
そうではなくて、他の筋肉で声門を圧迫しているっす。
なので声帯が固まる→音程を上げられなくなる、という状態(プルチェスト=音域が狭くなる)
なので、声門閉鎖“だけ”を使うつもりでおこないます。
顎の下が反応してしまう=声門閉鎖の力だけでは追いつかなくなるので舌の筋肉が手伝いたくなる→つまり、手伝わないと追いつかなくなるほど、下からの圧が強くなっている=息を押し出そうとしている、と言えるっす
まとめ
ブレスコントロール(特にプルチェストタイプ)に必須なスタッカート練習
・バ(口の中の空気圧)
・バハハハハ(バの続きを出すつもりで体はキープ)
・ン(顎の下触って反応していないか)
安定した声を出すには、当然安定した息を使えないといけません。
と、いうと「当たり前やん!」と思うんですが、案外ここ気にして練習している人は少ないです。
やれTAだ、CTだ、そんなこと気にする前にやることいっぱいあるよ、というお話でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ジウコトモニタ