発声のフォーム

ボイトレにリップロールは必要ない!?

ジウ研ゼミ会員

ジウコ先生、リップロールが上手くできないんですけど…

ジウコ

じゃあ、やらなくていいよ

ジウ研ゼミ会員

えぇ~~っ!?

って、よくジウ研ゼミ会員さまやレッスンに通っていただいている生徒さんとやり取りします。

そうです。リップロールはやらなくていいです。実際、僕はやりません。

日頃リップロールを“メインに”やっている人。

ライブやレコーディング前にそれっぽい人に見せたいだけなのか、イキってリップロールをやっている人。

今すぐやめましょう。

ジウ研ゼミ会員

じゃあ何でリップロールやっちゃいけないの?

ジウコ

じゃあ、逆になんでリップロールをやるの?

ジウ研ゼミ会員

えっと、それは…

ジウコ

じゃあなおさら止めよう。目的の分かっていない練習ほど無駄なものはない

ジウコトモニタ(谷本恒治)
クリアボイスミュージックスクール代表
数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、
TVなどでも紹介される。
発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、
現在も全国各地から受講生が集まっている。

この記事で分かること
リップロールの必要性
リップロールの不必要性
リップロールの本来の目的
リップロールに変わるエクササイズ

そもそもリップロールの目的、分かってまっか?

「声帯のウォーミングアップです」は20点。「腹式呼吸が…」は論外

冒頭にも書きましたが、目的の分かっていない練習はコンディションは悪化の一途を辿るばかりです。今すぐやめましょう。

「声帯のウォーミングアップです」なんてフレーズをよく見聞きしますが、間違いではないけど説明不足にもほどがあります。

このフレーズを使っているトレーナーは、実は本人もよく分かっていないか、説明を邪魔臭がっているかのどちらかです。どちらにしても信用できません。

先日「リップロールをすることで横隔膜を使った腹式呼吸に…」という記事を見かけましたが、それはもはや意味プーです。

閉鎖と呼気の関係性を作る目的

僕はボイストレーニング=ミックスボイスの習得、と捉えています。

というのも、ミックスボイスとは特殊な訓練に耐え抜いたものだけに与えられる特別な発声方法ではなく、「本来声帯と呼気を適切に使えた場合、こうなります」というだけのものなので、「適切な状態にしてあげる」ことそのものがボイストレーニングだからです。

以下の説明と定義をご参考に。

ガッと息を吐く→ガッと声帯で受け止める=地声
ガッと息を吐く→声帯で受け止めきれなくなってすっぽ抜ける=ファルセット
声帯を隔てて下と上で空気圧が均一になることで声門閉鎖を維持している=ミックスボイス
地声は「無理に出して無理に受け止めている」状態。ファルセットは「そのバランスが崩れた」状態。ミックスが適切に使えている状態です。

ちな、「ミックスボイスは高音域でも地声のような声を出す発声法です」は論外です。

これ言っときゃそれっぽい、がまだ通用してしまう2023年。腹式呼吸は通用しなくなりつつあるけどね。

参考までに。

一度リップロールを“声を出さずに”息だけでやってみましょう(そもそもこの時点で99.7%の人が脱落しますが、後程解説するとして)。

今、プルルルルと息を吹いている状態が、肺の底から唇の裏側まで均一に気圧が揃っている状態です。

その間で声帯が「近づいたら」(あえて「閉じたら」ではなく)、振動しやすいよね?というのがリップロールの目的。

声帯で受け止め過ぎたら唇でプルル、とできないし、呼気が強すぎたら音が鳴らない。

これで適切な閉鎖と呼気のバランスを作ろう、というのがリップロール。

が、残念ながらきちんとできる人は(ほぼ)いない

息の段階ですでに99.7%が躓いている

さっき書きましたが、声を出さずに息を吹くだけですでにほぼ全員脱落します。

「え?俺っち、できてるよ?」

心配するな。できてない。

参考までに。

リップロールに限らず、レッスンで「一回声出すこと忘れて息吐いてみ?」とやってもらうと、全然息が出てこない人がほとんどです。

そこに音乗っけるんで当然色んなことをやりだす

息が「正しく」出てきていないのに声門を閉じるもんだからなおさら息は出てこなくなる。

でも息が出てこないと声は出ないので、何かしらの力を使って息を「掻き出す」。
それが首の力、顎の力、舌の力
です。

これまでボイトレを受けたことある方で「顎の力を抜いて!」「舌の力を抜いて!」なんて言われたことがある人も多いんじゃなかろうか。

それって、躓いてコケそうな時に「手をつかないで!」と言われているのと同じ。至難の業です。

だってコケる=痛いのを「反射的に」嫌がって手をつくんだから。

同じように、息が出てこないのを「反射的に」気づいて顎や舌の力を使うもんだから、それを「力抜いて」を言われても、もはや禅問答。

これ見ると出来ていなかったことに気づけるんじゃあなかろうか。

この「アカン状態」でひたすら繰り返していれば、当然発声は良くなるどころか、なのは言わずもがな。

じゃあどんな練習をすればいいの?

ジウコがレッスンで初めにリップロールをやってもらう理由

僕はレッスンでまず最初にリップロールをやってもらうことが多いです。

理由は「何をやっているか(もちろん良くない動き)が一番分かりやすいから」です。
逆に言うと、それだけ難しい練習方法だということです。

レッスンでは長期的な課題と短期的な目標から、ぼんやりと「今回のレッスンはこんなことをやろう」と大まかにシミュレーションして挑みます。

それに加え、最初のリップロールでその日の状態、前回レッスンからの進捗具合をジャッジします。

もしあなたが自主練でリップロールをやって「今日はこうなってるな。じゃあこんな練習から入ろう」と判断できれば、それはもう明日からボイストレーナーを名乗りましょう。

代替エクササイズの考え方

では代わりにどんなエクササイズを行えばいいのか?

考え方としてはこんな感じ。

声門下圧がかかりにくいエクササイズ
なるべく「声感」が入らないエクササイズ
息を多めに使うエクササイズ

まあ、どれもニュアンス的には同じようなことですが。

これらを意識して発音、スケールを選択できればおk。

発音としてはs、f、などの声門上圧(簡単に言うと口の中に強い空気がたまる)を使いやすい発音、スケールとしてはなるべく声門下圧がかかるチェストエリアに長く滞在しない広いスケールが望ましいでしょう。

参考までに。

まとめ

・リップロールが苦手な人はやらなくてよい!
・そうでなくとも正しくできている人はほぼいないのでやらなくてよい!
・ようは声門上圧を作り、閉鎖と呼気のバランスが整えばおk!

危険、とまでは言わないですが、「どこがいけないかチェックしやすい」=「どこかしら必ずよくない何かをやってしまいやすい」エクササイズではあるので、寝ても覚めてもリップロール、はやめておいた方がいいです。

具体的にどこがいけないのか分からない人はレッスン、通信講座にてお気軽にご相談くださいませ。
独学でボイトレしようとググってこの記事にたどり着いたあなたに元も子もないことを言いますが、独学では上手くなりませんorz

最後までお読みいただきありがとうございました。
ジウコトモニタ

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