バンドやってるんだけど、スタジオで声が通らなくて悩んでるっす…
私はカラオケどころか、日常の会話でも声がこもってよく聞き返されるのが悩みです…
なるほどなるほど、これ、非常にたくさんの方が悩まれる問題ですよね。
そして決まって出てくるのが知った風なことを言ってマウント取ろうとする人。
腹から声出せてないんじゃね?
お腹は飲み食いしたものが入るところで、そんなとこから声は出ません。
声は声門閉鎖と呼気圧のバランスで作られます。
声帯のコンディショニングが上手くいっていないのに、腹圧だけを強めてもかえって声帯には負担となります。
とあるドラムの先輩と一緒にセッションした時の話。
その先輩の叩く音はとにかくデカく、数百人規模のライブハウスならかなり手加減して叩かないといけないほど。
セッションでは一人1曲ずつ、シンガーが入れ替わっていく形で行われたんですが、ライブ終演後その先輩が一言。
「全開で叩けたんはお前だけやわ」
僕は声量が決してある方ではありません。むしろボイストレーナーとしてはない方かも分かりません。
ではなぜその先輩は僕の声の時だけフルで叩けたんでしょう?
それは、「大きな声」ではなく「通る声」だからです。
ジウコトモニタ(谷本恒治) クリアボイスミュージックスクール代表 数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、 TVなどでも紹介される。 発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、 現在も全国各地から受講生が集まっている。 |
この記事で分かること
・声が通らない、こもる原因
・通る声を作るエクササイズ
声が通らない、声がこもる原因
間違っても「腹から声出せ」の知ったかには耳を貸すな
冒頭でも書きましたが、「腹から声出せてないんじゃね?」は完全な知ったかです。
そもそも、人は日常腹式呼吸で呼吸をしています。
正確には8割腹式、2割胸式を使っています。(どちらかだけを使うのはおそらく不可能)
声が通らない、こもる原因は「声を作る機能」に問題があります。
熱心なジウ研ゼミ会員の方は知っていると思うけど、声帯で振動した音は「喉頭原音」といい、「声の素となる音」です。この段階では「Bee~」としか鳴っていません。(「おはようございます」と言う時、声帯は「ビビビービビービー」としか鳴っていません)
喉頭原音がその上の空間(声道)で共鳴し、顎、舌、軟口蓋、唇の形によって母音となり、舌、歯、唇の摩擦・破裂を使って子音を作り、「声」になります。
ホースから水を出す、というのをイメージしてみましょう。
例えば10秒間で1ℓの水を出しましょう、と言われたとします。
あなたはホースを持って水道の蛇口を「10秒間で1ℓが出るであろう」という分だけ捻ります。
すると誰かがイタズラで蛇口を思いきりよく捻ってしまいました。
あなたはどうしますか?
恐らくホースの先を摘まんで、水が出る量を調節しようとしますよね?
これが「腹から声出せてないんじゃね?」の結果起こることです。
つまり、空気の圧力と声門閉鎖の力のバランスで適度に声帯を振動させないといけないのに、空気の圧力を加えたらバランスが崩れて息が漏れるか、逆に「漏らすまい!」と声帯が余計に頑張って締め付けてしまうかのどちらかにしかなりません。
間違ってもちょっとカラオケが上手い素人、ただの音楽サークルの先輩の知ったか意見には耳を貸さないようにしましょう。
声が通らない、こもる本当の原因1.軟口蓋
じゃあ、声が通らない原因って何?
上で紹介した、声道の使い方と発音の仕方、ほぼコレです。
繰り返し、声帯そのものの原因という可能性もゼロではありません。が、ほぼないです。
音は空気が振動して伝わります。そして空間の体積によって大きさが変わります。
洞窟やトンネルで声がよく響くのはそのためです。
なので、発声にも「空間の使い方」がとても重要になってきます。
そして、この空間の使い方で、「声の抜け」に大きな影響を与えるのが舌と軟口蓋です。
軟口蓋とは上顎の奥の方、喉ち〇こ手前らへんのことで、口から見て奥の上顎の窪んでいるところ、すぐの固い所が硬口蓋、徐々に柔らかくなって軟口蓋、喉ち〇この直前のヌルッとしたところが口蓋帆(こうがいはん)、喉ち〇こが口蓋垂といいます。
人は発音する時に口蓋帆挙筋が軟口蓋、口蓋帆を引き上げ、鼻腔への空気の侵入を「やや」阻止します。そのことでp,k,t,s,h,などの鋭い発音を作ることができます。
プロレスラーの藤波辰爾さんという方がいらっしゃいますが、滑舌の悪さで有名です。
藤波さんの言葉が聞き取りにくいのは、一つは早口であるというのがあるのですが、もう一つは鼻から息が抜けることで発音がぼやけているところにあります。これが軟口蓋があまり上がっていない状態の発声です。
YouTubeもやられているので是非チェックしてみてください。
声が通らない、こもる原因2.舌
次に舌です。
外国人(英語圏の方)って、やたら声が通ると思いません?
それが声道の使い方に関係しています。
一つは「o」の発音。「Rock」とか「Sorry」の、日本語で言うとアとオの中間のような母音です。
彼らはこの時、思いきり喉を開きます。
LOUDNESSというバンドのボーカルのニ井原実さんが、バンドがアメリカに進出した際に、よりネイティブな発音ができるように、この「Rock」の「R」の発音を懸命に練習したそうです。
ところが、プロデューサーに指摘されたのは「O」の発音。
この喉の開き方にニ井原さんは相当苦戦されたそうです。
前述の通り、空間の体積が大きくなるほど、音は大きく響きます。
もう一つは舌です。
- ・R…舌を引っ込める(巻く、と思っている人が多いですが間違いです)
- ・TH…舌を前に出す
この二つだけ見ても、英語の発音は舌があちこちに動きます。
それに対し、日本語はほとんど舌を動かさなくてもある程度発音が作れてしまいます。
なので英語圏の人よりも日本人は舌が固いんですね。
筋肉は固くなると縮まります(というか、縮まることで固くなり、力を入れられます)
実は多くの日本人は、何もしていない状態でも舌に力が入っているんです。
では、この舌の固さが声の通りにどう関係しているのか?
舌は舌骨というところから起始しています。
筋肉は力が入ると起始している方向へ収縮します。
つまり舌に力が入っている状態というのは、舌が喉の奥の方向へ引っ張られている、咽頭腔を圧迫している(声が響く空間の体積を狭めている)状態になります。
この舌の奥まりが声がこもる最大の要因です。
じゃあ、その状態で腹から声出したらどうなるか。
何も変わらないか、息を出さないでおこうと舌がより頑張るかのどちらかしかありません。
滑舌、声の通り、声のこもりの改善はほぼほぼ軟口蓋と舌ということがお分かりいただけたかと思います。
声の通りをよくする具体的な方法
じゃあ、軟口蓋を上げる、舌の奥まりを改善するには、具体的にどうすればいいの
ではここからは具体的な改善方法をご紹介していきます
STEP1.まずしっかり声道の空気を意識しよう
しつこく、声は声道の形によって作られます。そして音は空気が振動して伝わります。
なので、大事なのは腹から云々ではなく、声道でしっかり空気を使えるかです。
まず分かりやすく、口の中の空気をしっかりと使う感覚を身に付けましょう。
- EX.1 Si(スィッ)※「シ」ではない、「She」じゃなく「Sea」の言い方
「s」の子音でしっかりと歯の摩擦音を立てます。この音は大きければ大きいほどいいです。
コツは息を垂れ流しっぱなし(「Sーーーーー」という状態)で、間に小刻みに「スィスィスィスィ…」と発音していく感じです。
上手くいかない人は「Sーーー」という息だけでも十分練習になるのでやってみてください。
STEP2.舌を細やかに使う
次に舌の筋肉を使い慣れてみましょう。初めは苦戦するかもですが、通る声には必須なので根気よくチャレンジしてみてください。
- EX.2 Kukukuku…(クククク…)※なるべく母音を言わない
EX.1と同じく、「k」の破裂音をしっかり鳴らします。
これは重要なポイントがあって、以下の間違いに気を付けながらやってみてください。
- [間違いパターン]
- パターン1 「クッックッッ…」と小さな「ッ」が入る(喉で止めてしまっています)
パターン2 「k」の音が濁る(舌が固くなっています)
パターン3 「クゥ」と「ゥ」が強調される(舌の動きが弱いか声を押し出しています)
これも難しければ「kkkk」の息だけでも大丈夫です。「kakaka」や「kikiki」など、上手く行きやすい母音を探してやってみてください。
STEP3. 軟口蓋を上げる
最後は軟口蓋です。
僕の経験上、何故か女性の方が苦手な方が多い気がします。
いかに口腔内でしっかりと息を使えるか(発音を作れるか)の大きな分かれ道なので、これも根気よく頑張りましょう。
- EX.3 Pup(パッ)※可能な限り短く発音
コツはしっかりと唇を閉じて「出そうとしてるけど我慢して止める」という状態を作ること、そして一瞬口を開けて「パッ」と発音したらまたすぐに閉じて『タメ』の状態をキープすることです。
特にこの「P」の破裂音は、軟口蓋が上がっていないと絶対に作れない発音なので、できれば徐々に音程を上げていって、軟口蓋が上がっている感覚を感じてください。
同じく慣れないうちは「p」の破裂音だけでも大丈夫です。
まとめ
声が通らない、声がこもる原因はほぼ軟口蓋と舌(声道の使い方)
間違っても「腹から声出せてないんじゃね?」に耳を貸さない
練習方法は「s」「k」「p」でおけ
バンドで楽器陣の音圧に負けない声の作り方は、トーンコントロール(これも結局軟口蓋と舌が大きく影響しますが)が重要になるので、またもう少し発展した練習になります。
興味がある方、お悩みが改善されない方は、是非レッスンや通信講座でご相談ください。
もちろん、今回の内容以外のご相談でもオッケーです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ジウコトモニタ