2019.09.08trainer's column
発声の仕組みを知ってより良い歌声を作ろう!【ボイトレ知識】
ジウコトモニタ(谷本恒治) クリアボイスミュージックスクール代表 数多くのプロミュージシャンのボイストレーニングを担当し、 TVなどでも紹介される。 発声のメカニズムなど確かな知識に基づいた的確な指導で、 現在も全国各地から受講生が集まっている。 |
こんにちはこんばんは。
大阪ボイトレスクール、クリアボイスミュージックスクールのジウコトモニタです。
これまで多数のプロのシンガーさんを含め、15年間で1万人以上のボイストレーニングを担当してきました。
今回はThe・発声の仕組みをご紹介したいと思います。
ワケも分からず声を出すより、自分の体のどこを使えば効率的に良い声が出せるのか、知らないより知ってた方がいいっしょ?
オッチャン頑張って説明するんで良かったらお付き合いくださいまし。超長えっす。すみません。。
目次
- ○ どうやって声が出るの?
- ・声帯の構造
- ・声帯の振動原理
- ・音程が変わる仕組み
- ○ どうやったら声が大きくなるの?
- ・声になる仕組み
- ・声が大きくなる仕組み
- ・音色(トーン)が変わる仕組み
- ○ 最後に
- ・力を加えるのではなく、力を抜くべし!
- ・あくまでも話し声の延長
どうやって声が出るの?
“お腹から声を出して!”
お腹から声は出ません。最近はどこのボイストレーナーさんも言ってくれていますが、「お腹から声を出す」と思っていたらいつまでたっても歌は上手くなりません。
だってお腹は声を作る所でも呼吸をする所でもないもん。胃と肝臓と腸があるだけだもん。
ではどうやって声が出るのか見ていきましょう。
声帯の構造
喉を触るとボコッとした軟骨の塊がありますよね?これを喉頭-こうとう-と言いまして、上が甲状軟骨-こうじょうなんこつ-、下が輪状軟骨-りんじょうなんこつ-です。
画像は喉頭を上から見た図。
声帯は内側(画像で言うところの。層的な意味で言うと外側、えーい、ややこしい!)から粘膜、声帯靭帯、声帯筋(甲状披裂筋-こうじょうひれつきん-)という構造です。
で、呼吸時はこの画像のような状態。
発声時には、外側輪状披裂筋-がいそくりんじょうひれつきん-、横・斜披裂筋-おう・しゃひれつきん-の収縮により、披裂軟骨-ひれつなんこつ-が内側に回転して声帯を近づけます。
そして内側甲状披裂筋-ないそくこうじょうひれつきん-が収縮して張りを作ることで声門が完全に閉じられ、「ハッ!」と息を止めることができます。
(重い物を持ったりトイレで気張ったりする時に使っています)
声帯の振動原理
ベルヌーイの定理
はぁっ?なんじゃそりゃ!?
とお思いでしょう。
面白い動画を見つけたので、まずは下のリンクの動画をご覧ください(宇宙飛行士さんらしいです)
プロが説明してくれているので、僕が補足するまでもないのですが。
上に書いた通り、声帯は完全に閉じると息が止まります。なので、発声時は「不完全に」閉じた状態、とここでは考えます(閉鎖が弱い、という話ではありませぬ)
声帯の間を空気が通る
→ベルヌーイの定理によって声帯がくっつく
→「不完全に」くっついた状態なので空気の圧力によって声帯は開く
→空気が通った瞬間にベルヌーイの定理により声帯はくっつく
→エンドレス(息が切れたらエンドするけど)
これを一秒間に何百回と繰り返して音が鳴っています。
そして、ベルヌーイの定理は、空気の圧力が強ければ強いほど起きやすい。つまり、声門の下の空気の圧力を高めてやれれば、声帯は激しく開閉を繰り返すワケです。
試しにノートを2枚契って重ねて、隙間に「フーッ!」と強く息を吹いてみましょう。
髪はバタバタバタッと激しく音を立てると思います。これが弱い空気だとバタバタなってくれません。
しつこく「お腹から…」は、空気の「圧」を強めるのではなく、「量」を増やしてしまうので、声帯は閉じにくくなる→無理に閉じようとして摩擦が強くなって声が掠れてくる、あるいは気管をたくさんの空気が通り過ぎて喉がヒリヒリしてくる、といった現象が起きます。
「ボイトレ始めてから逆に声が枯れやすくなった」という人はほぼこれが原因です。
今すぐお腹から声を出すのをやめましょう。
音程が変わる仕組み
この赤い部分を輪状甲状筋-りんじょうこうじょうきん-と言いまして、コイツが収縮することで甲状軟骨が傾き、中の声帯を前下方向に引っ張ることで音程を作ります。
ゆるゆるのゴムを指で弾くと「ボヨヨヨ~ン」と低い音が鳴り、ピンと張った状態で弾くと「ビ~ン」と高い音が鳴る、というとイメージ沸きますよね?
この役割を果たすのが輪状甲状筋。
エグいくらい輪状甲状筋の動きが分かる動画
※音程が高くなる要素としては、声帯の長さ、テンション、硬さがあります。
バイオリンとコントラバスだと、バイオリンの方が弦が短いので音が高くなります。男性は声変わりで喉仏が出ることで声帯が長くなり、声が低くなります。
「えっ?ということは輪状甲状筋が収縮して声帯を長くすると、音程は下がるんじゃないの?」
アナタ、いいところに気が付きましたね。
声帯は長くなるんですが、高音発声時では(声帯靭帯の)テンション(張っている力)と硬さが優位になると言いますか、上のゴムの原理で音程が上がるワケです。とてもややこしいので、触れない方がいいかと思ったんですが、バイオリンの矛盾に気づく人もいるかと思ったので…なんせ、ゴムを引っ張る原理だけイメージしておいてくださいまし。
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どうやったら声が大きくなるの?
“声が小さいね、お腹から声を出して!”
しつこいけど、お腹から声は出ません。
だって胃と肝臓と腸があるだけだもん。
キョウビ、「声が小さい=お腹から」なんて言うガラパゴストレーナーはいませんが(医学的根拠がよく分かっていない時代にコレが蔓延った事実はありますが、今は声量=お腹から声を出す、ではないと医学的、音響学的、様々な学的に証明されていますので)、ではどうすれば声量はUPするのか。
“共鳴”という仕組みを見ていきましょう。
声になる仕組み
声帯がバタバタッと振動した音を喉頭原音-こうとうげんおん-と言います。この段階ではハエの羽の音のような小さい「ビーーー」という音が鳴っています。
これが声帯から上の空間、声道-せいどう-で共鳴し、その声道の形によって様々な「発音」になります。
この、喉頭原音が声道の形に影響されてトーンが変わることを非線形の原音-フィルター論と言いまして、まあ、前回も書いているのですが、同じ裏声でも聴こえ方が変わる、みたいな。
さらに息の流れを舌や歯、唇によって変え、「言葉」を作っているんですね。
日常会話で言葉を発する時、「喉」で音を作ろうとする意識ってないですよね?
ヒトは無意識に(幼少の頃に、お父さんお母さんの声を聞いて見て)、声道(舌を含む)の形を変えて発音しているんです。
ところが歌になると、過剰に「喉」で音を作ろうとしてしまう。
これが、歌が歌いにくい原因です。
素直に、自分がどのように話しているかを意識してみましょう。
声が大きくなる仕組み
もちろん、「お腹から声を出すこと」ではありません。
ホンマ、辞めようぜ、コレ。
例えばマライア・キャリーでもアリアナ・グランデでも、「体の使い方」が上手いだけで、お腹から声を出しているワケではないですからね。
なんとなく彼女たちの歌声を聴いて、「本場のハリウッド式メソッドを学びたい」と思うかも知れないけど、ハリウッド式でも「お腹から声出して」とは絶対に教えませんから。
むしろ「お腹から声出そうとするから上手くならないんだよな」というハリウッド式が、今になってようやく日本にも浸透してきた、という考えの方が正しいかと。
では、どうやったら声が大きくなるのか。
それは、声道の形(広さ)が大きく関係します。
画像(これはフリー素材って書いてました…)をご覧ください。
彼女の声が、生声より大きくなっていることは容易にイメージ沸くと思います。
では、何故ですか?
そう、空間が広いからです。
これを共鳴-きょうめい-と言って、簡単に言うと、音は壁に当たって跳ね返って原音に対して倍音-ばいおん-というのが生まれます。
少々コ難しい話をすると、100Hzが鳴ると、200Hz、300Hz、…という、例えばピアノのC1を鳴らすとC2、C3、C4も共鳴して、より厚みのある音になるという感じです。
この共鳴によって、小さい「ビーーー」という喉頭原音が、厚みのある「声」になります。つまり、声を大きくするのは声帯の形や呼気ではなく、共鳴腔-きょうめいくう-の形なんです。
さあ、「お腹から声出して!」がまっっったく関係ないことがお分かりいただけたと思います。そもそもお腹から声は出ません。しつこいですが。
※呼気は全く関係ないこともないですが、ここでは共鳴にフォーカスしているので…
音色(トーン)が変わる仕組み
お医者さんの画像パクりました。。
上の図に書いてないのですが、声帯から舌の付け根までが咽頭(いんとう)、舌の付け根から口の先までが口腔(こうくう)、鼻の奥が鼻腔(びくう)と言います。
これらの空間で共鳴して声になるワケですが、それぞれに特性があります。
咽頭…比較的低い周波数が強くなるスペース
口腔…中高音の周波数が強くなるスペース
鼻腔…比較的高い周波数が強く鳴るスペース
※鼻腔は極端に意識すると息漏れ、不明瞭な発音の原因にもなるので、初めは咽頭、口腔のみで考えた方が良いかと…。
レッスンでもある程度慣れてきた子にしか鼻腔の話はしないっす。
なので、歌声でよく使うのって、中高音ですよね?(歌の中で出てくる低音域でも実は話し声より高いキーであることが多い)
つまり、一番活用するのは口腔。もちろん、「口腔だけ」になったら、それはそれで薄っぺらい音になりますが(咽頭を通って口腔に音が入ってくるので、「口腔のみ」は物理的に不可能ですが)
口の中(特に口の奥)を広く使って、発音(特に子音のアタック)をしっかりしてあげるだけで、アナタの声量は見違えるハズ。
具体的な練習法は他の記事に書いてたりもしますが、またあらためて声量UPエクササイズを書こうかと思います。
共鳴腔がそれぞれどんな音が鳴るかやってみた
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最後に
やみくもに力を加えるのではなく、ご自身の体の構造を知り、効率よく使ってあげることが、声量UP、音域拡張に繋がります。
なんとなく頭の片隅に置いておいてください。
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力を加えるのではなく、力を抜くべし!
なんだか上手く歌えない、という時は、力が足りないということはほぼありません。(力の使い方に気づいていない、というパターンの人もいますが、筋トレをするのではなく、使い方に気付くだけでOK)
力を加える=筋肉は収縮し、硬くなります。必要なのは硬さ(声帯筋、声帯靭帯の硬さはある程度必要)ではなく、柔軟性です。
力のなさを疑う前に、力を使い過ぎていることを疑ってみましょう。
あくまでも話し声の延長
話す時に、声帯を使っている意識もなければ、息を吐いている意識もないですよね?
歌は、日常会話に規則正しくリズムと音階がついただけです。(ということは、歌と会話の違いは輪状甲状筋がより活躍するかどうかだけの違いとも言えます)
アナタのベストな声は、無理に作った声ではなくて、自然に筋肉、共鳴腔を使えた状態、アナタの本来の声が出た状態です。
クリアボイスミュージックスクール
谷本 恒治
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